Maroc へ行っている間に 季節が変わってしまったのかもしれない
天気は一向に良くはならなかった
路面バスの車窓から見える眺めは 寂しいほどに暗い大地と
雨に濡れながら佇む馬たちの姿ばかりだった
バスで向かう場所は
Jerez de la Frontera
シェリー酒の産地、フラメンコ、モータースポーツ そして馬術の街でもあった
〜 アンダルシア種カルトゥハーノ 〜
名馬の多いこの地方の アンダルシア産の馬たちに触れるため この街を訪れようとしていた
一向に止まない雨の中 バスは目的地へと走り続ける
荒れる海を眺め 雨に濡れる大地を眺め
いくつもの街や村に立ち寄りながら いつの間にか
Jerez の街にやってきた
市街地は 今まで通過した街や村とは 桁外れに活気を満ちていた
〜
何かのお祭りの最中なのかもしれない 〜
何処となく 祭りの際に感じる あの香りが漂っていた
いろいろな旗や 標識が飾られた通りを幾つも抜け
バスは ようやくターミナルへと潜り込んでいった
〜
雰囲気からして かなり大規模なお祭りが行われているようだ 〜
ココロの中に 少し不安がよぎった
宿にありつけるのだろうか...
予想通り 宿探しには難航した
英語が全くと言っていいほど通じないこの街で 宿も満室ばかり
何軒目かの所で かろうじて空いているオスタルがあり 何とか泊まる場所は確保できた
後から地図でその宿の場所を確認すると 実は何処に行くにも便利な場所にあることが分かった
苦労した分 とてもラッキーな場所を見つけることが出来たようだ
〜
Jerez 2002 XI Fiestas de Otoño 〜
確かに街は祭りの最中だったようだ
しかし この盛り上がりが 祭りだけのものではないと 気づくにはまだ少し時間が必要だった
辺りは完全に暗くなっていたが 食事を取るついでに街を散策することにした
宿の人に祭りのパンフレットをもらった
その案内によると この日の夜は野外でパレードとフラメンコのショーがあるようだ
そして パンフレットの最後に 何やら馬の競技のプログラムが書いてある
〜
一体何なのだろう... 〜
宿の人に尋ねようとしたが スペイン語がほとんど話せない自分では
まともに会話も出来ず 聞けずじまいになってしまった
ひとまず目抜き通りを探し 街を彷徨った
その頃には 有り難いことに 雨は止んでいた
広い道を通り 細い路地を抜け 右も左も判らず彷徨っていると
遠くから 何やら音楽が聞こえてくる
何とか目的の通りに たどり着いたようだった
通りに出ると 金や銀のきらびやかな服装に身を包んだおじさま達が
汗を流しながら まさに真剣な表情で演奏をしている
そして その周りでは ピエロや色とりどりの衣装に包まれた人たちが
周りの人々を巻き込みながら 通りを行進している
通りを端まで進んでは 再び戻ってゆく
人々も それについて 一緒に行進する
共に歩いていると ピエロ達がやってきて 頭の上に紙吹雪をまき散らす
逃げる人々は ピコピコハンマー片手の のっぽのお兄さんに追いかけられる
そしてそれを追いかける人 逃げる人 写真を撮る人 遠くから見る人
みんな思い思いに 祭りを楽しんでいる
久々に スペインの人々の はしゃぐ姿を見たような気がした
辿り着いて1時間ほど経っただろうか
楽しかったこのパレードも終了となってしまった
ということで 次に別の広場で行われているというフラメンコを見に行くことにした
しかし その広場は何処にあるか分からない
先ほどと同様に 広場を求め 路地を彷徨っていると
目抜き通りを見つけたように 難なく会場にたどり着くことが出来た
ステージは既に始まっていた
ちょうど ギターに合わせて唄が披露されているところだった
風貌からして この街での重鎮と思われる男性歌手たちとギタリストたちが
代わり代わり 持てる想い 〜 オモイ 〜 を披露してゆく
"
身体中に響きわたる その歌声 その音色 "
生で聞くのは初めてだった
過去にCDなどの音源で聞いたときは ただ叫んでいるだけにしか思えなかったのだが
その凄まじい情熱は 人々の魂を揺さぶるのに十分なパワーを持ち得ていた
その後 フラメンコダンスも登場し 最後 出演者全員の演技・演奏でそのままクライマックスを迎えた
人々の興奮は 最高潮に達していた
やはりここにも 祭りを十分堪能している自分がいた
そして会場を後にした
時刻はPM11:00過ぎ
なのに まだ食事を取っていなかった
それほどまでに このイベントを楽しんでいた
祭りのためか ほとんどのレストランがまだ開いていた
適当な店に入り パエリアとシェリー酒で一人乾杯する
〜
いつまでも こんな時間が過ごせたら いったい 人は幸せに感じるのだろうか 〜
ただ この夜は そのままゆっくりと更けていった
次の日 この街での目的としていた"馬 "を見に行くことにした
〜
Real Escuela Anduluza del Arte Ecuestre (王立アンダルシア馬術学校) 〜
そこに行けば 驚くような馬のショーが見れるという
少し雨の降る中 手に入れた地図を片手に 目的の学校へと向かっていった
街の中心部を抜け 大通りを北東へと向かって行く
残念な事に 進めば進むほど 雨足は強くなっていった
しかし 進んでも 進んでも 馬術学校は見えてこない
"
もしかしたら道を間違えたのかもしれない そして周りには人も誰も居ない "
仕方ないので、ちょうど目の前のバス停にやってきた バスの運転手に聞くことにした
やはり英語がほとんど通じない彼に 何とか場所を訪ねる
王立アンダルシア馬術学校へ行きたいのですが ?
「そんな所へ行ってどうするんだ。
Estadio Chapín じゃないのか ? そこならこのバスで行ける。」
その場所が何なのかはよく分からなかった だが このバスに乗りそこに行くのが賢明なように思えた
結論は 忠告通り そのバスに乗るということにした
バスに揺られて約10分 目の前に巨大な競技場が現れた
雰囲気からすると なにやら大会が行われているようだった
ひとまずバスを降り 建物の様子を見てみる
依然として 一体これが何なのか もしくは馬術学校なのかさっぱり分からない
しかし ここまで来たからには 中へ入ってみることにした
チケットを買い 中に入る
中には さらに幾つかの会場があるようだった
馬術競技の会場 その外には数多くの馬具の店が並び
会場から離れると 遠く馬車のレースに向けたトレーニングをしている
その側では ジャンプ競技の練習をする馬や人たちが大勢集まり
少し離れたところに 世界各国の選手村ならぬ馬たちの村が立ち並んでいる
"
ドイツ、アメリカ、カナダ、イギリス、日本、韓国、インド、ブラジル、イスラエル、サウジアラビア、スウェーデン ... "
また離れた建屋の中では ウエスタンスタイルに身を包んだ人たちが 馬を慣らしているようだった
会場を回っているうちに 何となくこの大会の意味合いが分かってきた
"
JEREZ 2002 Juegos Ecuestres Mundiales 〜 World Equestrian Games(WEG) 〜 "
しかし ここが馬術学校ではなく 世界のどこかで4年に一度行われる 言わば馬競技界のオリンピックの会場に
偶然辿り着いていたと分かったのは 実は帰国してからのことだった
プログラム上 この日はジャンプ競技のウォームアップ日となっている
その所為もあり 会場の観客は比較的少なかったのだが 十分楽しむことが出来た
競技場のベンチに座り 売店で買った軽食を食べながら世界各国の馬のジャンプを眺め

別の会場の観客スタンドの上から 今まさにウォームアップをしている馬たちの姿を眺め
ウエスタン会場では 急停止の練習をしている光景を 席に座る多くの子供達と眺め
会場の外に数多く並ぶ店に入り 買うはずのない馬具達を眺める
Jerez に居るのは この日だけのつもりだった
だが そろそろ出発しようと何度も思いながらも 会場を後にしたのは結局夕方頃だった
"
この街で 祭りはその週いっぱいまで続く
そして 天候も回復してきた
やはり もう少しこの街に残るべきだろう... "
バスで来た道を 今度はゆっくり歩きながら考えていた
でも 最終的には 会場でもらったポケット時刻表を片手に
Sevilla に向かうの鉄道駅のホームの上に立っていた
結論は こうだった
〜
この日のうちに 行けるところまで行こう とにかく次の国へ向かおう 〜
そう心に秘め 次なる国 ポルトガルへと向かっていく