信じれない風景がそこにはあった
Juneau の港を出たクルーズ船は長い時間によって形成された回廊をただひたすら進んでいた
優雅に泳ぐオルカや海岸で餌を探すブラックベアを眺めながら 行き着いた先には
冷たい空気に満たされ 美しく輝く氷の世界が広がっていた
"今まで見たことのない世界の中に自分が存在している"
今はただ 時の経つのも忘れ 目の前の世界が現実であることを肌で感じていた
どれだけこの風景を眺めていたのだろうか
ふと船の近くに視線を移すと この世界の住人たちがじっとこちらを見つめていた
彼らにとっては きっと目の前にいる別世界の住人の存在が不思議に違いない

乗っていた船がゆっくりと動き出すと 彼らもゆっくりと泳いで船に近づいてきた
いつの間にか 仲間が増えたと思われたのかもしれない
Juneau の港へ帰る途中、 偶然オルカの家族に出逢った
彼らは船が近くにいることも気にせず優雅に泳ぎ続けていた
決して逃げるわけではなく 決して近づくわけでもなく
船は徐々に彼らに近づいていった
しかし彼らの姿勢は全く変わらなかった
決して逃げるわけでなく 決して近づくわけでもなく ただ優雅に泳ぎ続ける
しばらくしてオルカは何度となくジャンプを繰り返すようになった
優雅に遊ぶ子供のように ただひたすら飛び続ける
そしてその時はやって来た

家族のうち一番大きいオルカが深く水中に潜っていった
そして次に現れたとき オルカは大きく空を舞った
船のクルーたちも見たことがないというほど素晴らしい大ジャンプであった
ただ純粋に感動した
すばらしさのあまり その瞬間何も出来なかった
その瞬間を"写真"という形に残すことさえも ...
過ぎ去った光景は 目の前に広がる風景の中へと静かに消えていった
本当に一瞬の出来事であった
そして船は何事もなかったかのようにゆっくりとJuneau の港へと進んでいった
ただ船の中の人々にとっては話は別だった
Juneau の港にたどり着くまでの間 目の前に消えていった光景を
お互い言葉にすることによって 必死で心に留めておこうとしていた
そして Juneau の港にたどり着いたとき 外はあいかわらずの雨模様だった
はたしてオルカに歓迎されたというのだろうか
ただ分かるのは
短いようで長かった Inside Passage での最後の時間が
こうして過ぎ去ってゆこうとしていることだけであった
心の中に豊かな風景を 創れるだけ創って
to be continued...