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On the ferry named "Le Conte" / Inside Passage Alaska, the United State





予定では11時前に出発するはずの船は約1時間遅れで Sitka の港を出港した


いずれにせよ目的地のJuneau へ着くのは17時間後のことだ


1時間くらいの遅れはそんなには気にならない




直線距離にして約200キロ離れた目的地へこの船は幾つかの港に立ち寄りゆっくりと進んでいく


なんと優雅なものなのだろうか




外は相変わらず小雨が降っている



そんな中 船はまるで出口の見えない迷路のような海域をのんびりと進んでいた





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速度が遅いとは全く感じなかった



そのスピードはアラスカに流れる時間を心に刻むにはちょうどいいものであった





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途中クジラが生息する海域を船が通過するとのアナウンスが入った



船に揺られながらクジラを見るのもなかなかいいものだ




そしてその海域に入った時 本当にクジラはやって来た



クジラがやって来るたび館内放送が鳴り響きクジラの出現を知らせてくれる

その知らせを聞き、多くの乗客がデッキの上を双眼鏡片手に走り回る


なんとも不思議な光景であった



そういったやりとりが1時間ほどあったのち 2頭のクジラが船の遙か前方に現れた

進行方向ということもあり船はそのクジラへと進んで行くこととなる


それに気づいたのかどうかは分からないが彼らのうち1頭がこちらへと進んできた


船も進みクジラもこちらへ向かう




何とも興味深い状況に自分も船の先端からこの風景を見ることにした



しばらく眺めていると大きな背中がはっきりと見えてくるようになり、

そしてあっという間にこの不思議な距離は縮まり彼は目の前で大きな水しぶきを上げた



危ないと思ったその時、船の先端にぶつかるかに見えたその巨体は船体の真下の海中深くへと沈んでいく



遊んでいたのかもしれない




そして洒落た挨拶をしたクジラはフェリーのはるか後方へと消えていった



乗客達が興奮して騒いでいる間にいつの間にかクジラの海域は過ぎ去っていた






ずいぶん時が経ったように感じたが まだまだ先は長い




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船にはネイティブの方々も何人か乗っていた


日本人とすごく雰囲気が似ていて不思議な気分である



また昨日の宿で一緒だった中学生達とも再び一緒になった


彼らは夏休みの間アラスカ各地を転々と廻りキャンプ生活を楽しんでいるとのことである


そのため食料、テントや遊び道具などとてつもなく多い荷物を持っていて本当に驚かされた



なぜか映画の入ったビデオテープまで何本も持っていた


そのおかげでクジラの後は映画三昧となった



船中の乗客がテレビのある部屋に集まり みんなで映画を楽しんだ

自分は雰囲気しか味わえなかったがそれでも楽しかった



何本も映画を見ていた時 ふと不思議な光景が目に入った



隣で映画を見ていたネイティブの方が戦争のシーンになると席を立ち何処かへ行ってしまう

戦争シーンが終わるとまた席に戻ってきて楽しそうに映画を見ている


そして彼はそれを何度も繰り返していた


何度かその光景を見ているときその理由が分かったような気がした





"ベトナム戦争"





そう この幾つかの映画に登場する戦場はすべてベトナムであった


もしかしたら彼はあの戦争の最前線に実際にいたのかもしれない


そう感じたときネイティブの方たちが背負っている傷口を垣間見たような気がした





そして数時間の時が流れ短い闇の時間がやって来た


多くの乗客が明日のために短い休息をとろうとしていた





もうこの船の中での物語はこれですべて終わったようにみえた


だがもう1つだけとっておきが残っていたようである




                                           to be continued...





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