〜 沖縄発祥の地 神聖なる島・久高島 〜
この島を訪れる前 正直行ってもいいのかどうか迷っていた
立ち入ってはいけない場所も多く ほとんど観光地化されていないという
観光客を寄せ付けないような雰囲気があるようにも思えた
だが この島に何か強い魅力を感じ 思い切って久高行きの小さな高速船に乗り込んだ
沖縄本島から 15分ほどの船旅であった
島にたどり着き 見渡した風景は何とも不思議なものだった
〜 昔ながらの白いセメントの道 本当に観光地化されていない島の風景 〜
この風景を見たとき 心の中に何か安心感のようなものを感じた
きっと 心の奥に持つ ふるさとの風景に似ているのにちがいない
船から降りると 多くの出迎えの人々が待っていた
しかし 島でよく見る 客引きの人達は誰一人いなかった
観光客が来ることを 島の人達はあまり望んでいないのかもしれない
港からは ちょうど話しかけた人の車に乗せてもらった
宿の場所を聞いたところ そのまま送ってくれるとのこと
"お兄さん 乗っていきますか" の一言に お願いすることにした
トラックの荷台に揺られ 5分ほどすると宿の前にたどり着いた
時間は十分あったので 荷物を置き 夕方まで島を巡ることにする
最初 自転車を借りるつもりだったが 結局歩いて島を廻った
理由は 島をもっと身近に見たかったから
街へ向かった
どこまでも続く白いセメントの道と 雲一つない青い空が 美しい風景を創り出していた
海へ向かった
おだやかな時間が あたりまえように 静かに流れていた
森に向かった
この島が何かに守られているような そんな気がした
だが 歩けば歩くほど、島が遠く感じていた
誰かに会って 話しかけても
ますます 島が遠く思えた
彼等は一様に笑顔を見せたが 何故かその笑顔の裏に 大きな壁を感じた
〜
島に受け入れられていない 〜
その壁の向こうへは どうしても入れないように その時思えた
最後に島の先端へと向かった
先端に向かうその道は ただ真っ直ぐに 何処までも続いているようだった
先端には観光で来た女の子二人と釣り人が座っていた
この出逢いが壁の向こう側への入り口だったのかもしれない
島に来て ここで初めてまともな会話をしたように思える
〜 海を眺めながら 海の風を感じながら 〜
しばらくすると 釣り人の友人の車がこの先端まで迎えに来た
おだやかな時が過ぎ 最後に 彼が一言こういった
" にいちゃん 一緒に乗ってくか?"
長い長い時間をかけて歩いたこの道を 車は一瞬にして過ぎ去っていく
軽トラックの後ろに乗りながら 徐々に沈んで行く夕日を眺めていた
そのとき心の中では なぜ旅をするのか その理由を考えていた
不思議な気分だった
そして 車は街の中に入り 人々の待つ街中の広場へと到着した
人々の笑顔には壁は感じなかった
いつの間にか壁の向こう側に入っていたのかもしれない
宿に帰った後は 夜遅くまで この宿のお父さんと話し込んだ
人生のこと 仕事のコト 日本の未来のこと 沖縄の音楽のこと
三線を片手に しんみりと泡盛を飲み 本当に長い間語っていたように思う
次の朝 宿の外に出ると 一風変わった島の住民達に出迎えられた
警戒しているのだか 落ち着いているのだか
なんともよく分からない彼等の姿は
朝のすがすがしい空気と共に 気分をほのぼのとさせてくれた
島の街や海や森にもう一度逢いに行った
どこに行っても 静かな時間が流れていた
"街に行き 人々のもつ時間を感じとり"
"海に行き 浜に流れる風を感じとり"
"森に行き 木々の香りを感じとる"
自分が 本当に贅沢な時間を過ごしているように思えた
帰り際 森のそばの道を歩いていると 畑仕事をしている一人のおじいさんと出逢った
本当に人なつっこいおじいさんだった
人と話すのが とても好きなのかもしれない
島中の名所を 子供のように無垢な笑顔で語ってくれた
しばらくして おじいさんが愛車で街に帰ろうとしたとき
彼の口から この島で何度か聞いた あの言葉がまた聞こえてきた
"兄ちゃん うしろ乗ってくか"
歩いた方が早いかもしれないが そのおじいさんのお供をすることにした
ガタガタガタガタ....
本当にゆっくりとしたスピードで その乗り物は街へと向かっていく
宿の前で降ろしてもらった後も 彼の愛車はゆっくりとゆっくりと進んでいった
ちなみに彼の愛車は "トラクター" だった
短い滞在時間だったが 何とも濃い時間を過ごしたように思える
宿を出て 昨日たどり着いた港に立ったとき
たどり着いた時とは 全く気持ちでここに立っているような気がした
この島には 長期で訪れる人がかなりいるという
彼等は本当に 贅沢な時間の過ごし方を知っているのだと思う
昔からの形を変えない島
そんなこの島が 何ともいとおしく感じた