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Yubari Colliery / Yubari Hokkaido , Japan





いつだったか ある新聞の記事に



無くなりつつある炭坑街の風景のことが載っていた



〜 失われて行く かつて存在した人々の暮らしの灯火 〜




その姿に触れたくて 夕張という街を訪れた










3月末


まだまだ雪に覆われているこの街にも

徐々に春の馨りが漂い始めていた



正直、炭坑街が何処に有るかも 果たしてまだ残っているかも分からないまま

この山あいの街にある かつての炭坑跡へと足を踏み入れていた




〜 持ち主を無くした 当時の大繁栄の面影 〜




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今は資料館の一部として機能している かつてのヤマに

立ち入った時の 何とも切ない気持ちが いつまでも忘れられない




ただ 資料館の所々に飾られた 写真のなかに


以前新聞の記事で見た 懐かしい風景が映し出されていた




〜 炭坑街の最後の住人達が暮らす街 〜




ここ数年でそのほとんどは取り壊されてしまったという



しかし、ほんの少しだけ まだこの街に

実際に人々の住む かつての炭坑街が残っているらしい




そのことを聞いた直後 ほとんど雪に閉ざされた道を ひたすらその場所へと進んでいた




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出迎えてくれたのは 一匹の犬だった



この犬のおかげで 坂を登り切った所の 一軒の家を訪ねることとなった





一階建ての小さなそのいえには 一組の老夫婦が静かに暮らしていた



かつて炭坑がまだいのちを持っていたとき

その場所でお風呂屋(銭湯)を営まれていたという



今でこそ その家より山手には 建物は見えないが

当時はその遙か山の上まで 炭坑街は続き

暮らす人々の熱気と活気で この山は満ちていた



日本一活気に満ちた場所と言われたこの場所も

今や静かな 山あいの 小さな小さな街となってしまったが

土や雪や自然の中で 今でも幸せを感じ暮らせる人々の姿を

心から美しく感じた




しかし その生活も もう長くは無いという




街の雪が ほとんど無くなる頃には


街の中に立てられた コンクリートの建物へと移ることになっている



いわゆる "立ち退き" であった




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" 麓に移ると もう畑の土を触ることは二度とできなくなる "


" でも それは仕方のないこと "


" 本当は今の生活を続けられれば どんなに幸せだろうか "









訪れてからもう数ヶ月が経ち


あの街はもう失われているだろう



だがこの夕張の街に たった一画だけ失われずに残されている家々があるらしい




それは人が住んでいる場所ではなく


かつて多くの人々を魅了した ある映画のロケ地であった




それだけでも 残っていることが嬉しく思う


しかし 冬の夜 夕張の街を 暖かく照らしていた


あの家々の電灯は もう二度と見ることができない




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