この街を訪れたのは、ある人に出逢ったからだった
"二風谷"
〜 アイヌ民族が最も多く住む街 〜
元国会議員である彼は、アイヌ民族に関する講演会で
自身の住む街のことを話し、その講演の中でぜひとも遊びに来て下さいと言った
きっと社交辞令だったに違いない
でも彼の話す街の様子が気になって仕方がなかった
そして、ある雪解けの季節に ふと この街を訪れた
車でこの街にたどり着いたとき、妙な感覚を覚えた
" まるで日本ではない場所へ来たようだ ... "
風景は他の場所と変わらない でも、何かが違う
そこに流れる風が 心と体をまったく別の世界へと誘っていた
彼の創り上げたアイヌ記念館を訪れた後、すぐ近くにある自宅へ立ち寄った
彼は以前と変わらぬ姿で この見ず知らずの旅人を迎えてくれた
そしていろんな話をした
講演会の時の話、アイヌ民族の話、二風谷の話、近くに造られたダムの話、そして結婚相手の紹介話 ....
常に優しい口調で語る姿の奥に 自然と共に生き続けてきた彼等に脈々と受け継がれる民族の誇りが重ねて見えた
それは我々日本人が忘れようとしているモノに対する警告のように思えてならない
滞在中、家の中には焼き魚の香りがほのかに漂っていた
彼の話す世界は 今まで日本で出逢ったものと少し違っているものに思える
それは外国、特にアラスカで感じた世界に何となく似ていた
"日本は単一民族国家でない"
そのことを実感したとき 何だか無性に嬉しい気持ちになった