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Inishmor Island / Golway Co. , Republic of Ireland




やはり雨か...



心配してい昨日からの雨は結局止まず、外には小雨がぱらぱら降っていました。

このぐらいの雨なら船はきっと出るだろう。と思い急いで朝食をとり出発する事にしました。


朝食を終え、出発しようとしていると、例のアイルランド人 マイケルがのんびり紅茶をすすっていました。



「もう、出発かい?」


うん。天気がもっと悪くなる前に出発するよ。 あと今日は日曜日だからバスも無いからね。


「じゃあ歩いていくのかい?」


疲れたら途中でヒッチハイクでもするよ。


「そうかい。俺もあと1時間ほどしたら港へ向かうよ。 じゃあ今夜あの島のパブで落ち会おう。」


そうですね。 じゃあまた今夜会いましょう。



そう言って彼と別れました。 結局彼と再会する事はなかったのですが...









港までは約5マイル。 小雨の降る中一人のんびり歩きました。



〜 手を伸ばせば届きそうなほど低い雨雲。 そして道以外には岩しかない荒涼とした大地。 〜



今日が日曜日であったため、朝のミサに向かう人々の車以外すれ違うことなく歩いた2時間後、

ようやく Rosaveal 港に到着しました。


カウンターで確認したところ、30分後出発の船があるとのこと。 この間に軽く食事を済ませ船に乗り込みました。




〜 やはり海はすごく荒れているなぁ 〜



小雨の中、船に揺られること約1時間、途中すごい揺れのため叫び出す人も何名か

おられましたが、無事アラン諸島 Inishmore 島に到着しました。


到着後、今日泊まる安宿を確保した僕は自転車を借りこの島一の名所 Dun Aengus を目指しました。



自転車で小高い丘を走っていると先程まで降っていた雨も止み、代わりに

ちょうどいいくらいの風が吹いてきました。




〜 ホント自転車を借りて正解でしたね 〜




自転車で走ること約20分、目的の Dun Aengus に到着しました。


ところでこの Dun Aengus とは100mくらいある絶壁を囲むようにして作られた円形状の遺跡であり、

元々はケルト人がこの島にやって来る前に先住民によって築き上げられたとのことでした。


遺跡のスケールもさることながら、風の強さには圧倒されました。

そして絶壁には柵も何もないということにも...



この場所に着き、僕は崖の渕にあった小さなくぼみに座り、ずっと遠い海の向こうを眺めていました。


しばらくするともう高いという感覚、そして怖いという感覚はまったく無くなり、

これ以降高さに対する恐怖心が何処かへ行ってしまいました。


こういった所に佇むと何かまるで自分が不思議な空間にいるような気持ちになるようになりました。



この遺跡には1時間ほどいたと想います。 


その後、近くのお店で手紙を書いたり、教会の跡地のような所を自転車で廻りながら元の村へ向かいました。



宿のある村へ戻る途中、小高い丘の上に円筒形の形をした遺跡がありました。

入り口でお金を払い、日本語のパンフレットを受け取ってその遺跡までたどり着くと、

やはりこの場所もすさまじい風が吹いていました。



これじゃ木もほとんど生えないはずだなぁ



そうつぶやきこの円筒を後にしたその時、すさまじい風により手に持っていた

パンフレットがとばされてしまいました。



あっ、しまった。



とそう叫んだ時、不思議な出来事が起きました。


空高く飛んでいったパンフレットがこの円筒形の遺跡に吸い込まれるように上から入っていき、

そして内壁にそって1周まわった後、遺跡の入り口から外に出て僕の目の前に戻ってきました。



これはまるで風のダンスだなぁ...



不思議な感覚にとらわれながらもこの遺跡のすぐ側の塔に登りました。

塔のてっぺんに立つと島の大半を見渡すことが出来ました。



すごい風景だな。 まるで島が傾いて海に沈んでいこうとしているみたいだ。



断崖絶壁が続く島の南側から北側に向かって地面は徐々に低くなり

そのまま海に滑り込むような形で島が成り立っていました。



本当に不思議な島だなぁ



いろんな思いが交錯しながら再び自転車で元の村に戻りました。

宿にもどり休んでいると、突然オーストラリア人のカップルに声を掛けられました。



「僕たち今下のパブで飲んでるんだけど、もしよかったら一緒に飲みませんか?」




そして今夜も異国の人々と過ごす長い夜がはじまりました。




   old_cathdral      Dun_Aran_circle      clifts_of_aran









オーストラリア人の彼はジャック そして彼女の名前はジェニー




この宿の下のパブで彼らと3人でギネス片手にお互いの国の話をしました。


オーストラリアのミュージシャンのこと、自分の国で自分達がどのような事をしているか。

そして、これからの人生について...


いろいろな話をしていたその時、ジャックが"別の店に行ってみないか?"と言い出しました。

僕、そしてジェニーもそれに賛成し、この店を後にし街外れのパブへ向かいました。



「あっ、雨。」



ジェニーがそう言った直後、突然天気がどしゃぶりの雨に変わってしまいました。


雨具は全て宿に置いてきてしまったため、3人とも雨に濡れながら猛ダッシュで走りました。



そして到着したパブで飲み物を注文しようとしたそのとき、店員さんが一言こういいました。



「今日は音楽をするのでこれ以降はオーダーを受け付けません。」


.....


"まだ8時なのにね。別の店を探しましょうか。" とジェニーの一声で別の店を探しました。


街の中心部方面へ戻ること約5分。 2軒目のパブが見つかりました。

が、しかしここでも思惑が外れました。


「こんにちは」

......

「こんにちは」

......

「こんにちは」

......


誰も出てこない... 10分待っても人の気配すら感じられない...


"しかたないね。 別の店を探しましょう。" と再びジェニーの一声で別の店を探すことにしました。


そしてほとんど街の中心部まで戻ってきたその時、パブを発見しました。


この3軒目のパブに入ったとき、 なぜか空気が凍っている感覚を覚えました。



信じられない。 なんてことを...


おお神様、どうしてこんなひどいことが起きてしまうのですか...




パブにいた人達が口々にそう言っているのを聞き、何かとんでもないことが起きたのだとわかりました。


そして、パブにいたお客さんの一人に何が起きたのか聞いてみると、彼はぼそっとこう言いました。



北アイルランドのある街で爆弾テロがあったんだって...



〜 1998,08,15 PM3:10 Omagh, Northern Ireland 〜





このテレビに映し出されていた光景が死亡者28名 負傷者約220名というアイルランド史上最悪の

悲劇の映像であったということを知ったのは数日後に再び戻ったダブリンでの事でした。




                                   to be continued...




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